『サイドカーに犬』(根岸吉太郎監督/配給:ビターズエンド)
http://sidecar-movie.jp
小品だが、しかし、とてもいい作品だと思う。
最近の日本映画のテーマの一つに、「家族」「恋人」「友人」のような、
カテゴリカルな関係に還元されない、オリジナリティのある関係を描こうと
する流れが存在している。これは、現代日本社会が高度情報化と都市化
のなかで人と人との関係性が流動化し、どのような着地点をもつのか、
多くの人々にわからなくなっていること、そしてその中で多くの文学表現が
何か共感を呼ぶ新しい関係性を描き出そうと、あがいていること、
そのことに底流が求められるだろう。
小学4年生の薫(松本花奈)は、ある日母親の家出と入れ替わりに家に
やって来た、ヨーコさん(竹内結子)という女性と出会い、ひと夏の、
年の離れた不思議な友情を結ぶ。
この作品が描こうとする物語は、青春ドラマでもないし、恋愛ドラマでもない。
かといって、子どもの視点からみた成長ドラマ、といい切れるわけでもない。
これは、現代児童文学が、対象化としようとしているテーマ性に近い
作品だと思う。そこにあるのは、定型的な戦後的「近代家族」が80年代以降に
流動化してゆくなかで、子どもがどのように自身の生き方を見いだしていくのか、
という現代的テーマだ。
『M/OTHER』(99)『火垂』(01)などで現代日本映画の一角を担う、
猪本雅三の瑞々しい動くキャメラ、根岸監督の作りすぎない自然な演出が、
主演の二人(薫、ヨーコ)の表情を活き活きと捉えている。
作品公式サイト;http://sidecar-movie.jp
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